03 | 2024/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
やってみたいなーと思うバレンタインデーを書いてみました。
ものすごく雑で読み返しなしの一発書きということを念頭において、ショートストーリーをお楽しみ下さい。
楽しめるものであれば、ですが。
準備はできた。
思い返してみれば去年のバレンタインは最悪なものだった。初めて作るチョコレートは固まらなければ、液体でもないという中途半端な硬さ。大人っぽくお酒を入れれば酒臭くなり、アレンジでナッツを入れればデコボコで見た目が非常に歪という、もらっても喜べない代物だったと記憶している。最大級のおまけとして、彼氏が甘いものを苦手だということをしっかり失念していた。
それでも初めてのバレンタイン。見目がどうあれ、受け取ってくれるものだと思うのはわがままだろうか。
「食えるの?」
第一声がこれだ。
「毒は入れてないっ!!」
胸を張れることでもない。
「味見した?」
ちらりとこちらを窺う目は、かなり冷たい。
「……まだ」
味見できるような代物でないのは分かっていた。
「無理に作らなくて良いから、コーヒー入れてよ」
そっぽを向かれた、苦いバレンタインである。
それでも今年は一味違う。というより、作るのはやめておいた。もったいなくて食べるまではいいが、その後の入院生活は是非とも避けたい。
彼のよく吸うメーカーのタバコを買って、中身を取り出す。今回のメインプレゼント、シガレットケースに詰め替えた。アルミ製で軽く、シンプルな造り。側面にあるボタンをスライドすれば、所定口からタバコが出るというものだ。片手で取り出せるという売り文句は、吸わない自分には実感し難い。便利なのかもという淡い期待感のみである。
だが、「これ」でないと上手くいく見込みが皆無になってしまう。
バレンタインコーナーで売られていたピンクの袋に入れ、赤いリボンで口を縛る。おまけにもらったバレンタインを記すシールを貼れば出来上がりだ。
「よし」
無意識に零れた声と共に手を握る。汗ばんだ手を服で拭い、部屋から出てリビングへと向かった。
「じゃじゃーん」
効果音をつけて、ついでに大きく掲げて見せる。彼は驚くでもなく、喜ぶでもなく、若干哀愁を漂わせてこちらを見た。主観で言わせてもらえば、爺むさい男である。
「なに?俺に対する嫌がらせ?保険金はやらねーよ」
「ばっか。結婚もまだなのに保険金狙うわけないでしょ」
「じゃぁなに?有休無駄遣いは勘弁な」
「なんで有休」
「去年のお前に聞けよ」
去年の自分と言えば、有給休暇を使って病院ツアーに行っていた。原因は食あたり。
「……それはさておき。今回は至ってまともなんだから」
なんといっても特別製である。
ずずいと袋を押し付けると、彼は嫌そうに包みを受け取った。はぁとため息をつくと、諦め顔でリボンを解く。出てきたアルミ箱を睨み付け、慣れた手つきでボタンをスライドさせた。タバコが出てくる。
「銘柄は?」
「マイルドセブン」
「よくできました」
ようやく安堵したらしい彼は、本日初めての笑顔を見せた。
「サンキュ」
「どういたしまして」
彼は早速口に直接銜えて火をつける。美味そうに吸うと、細長く煙を吐いた。
バレンタイン、翌日。
彼は仕事場で一服をする為に、廊下に出た。愛煙家には厳しい世の中になりつつあり、会社にもその影響は顕著に出ていた。読みかけの書類とシガレットケース、ライターを持ってドアを開けた。廊下の端にある喫煙部屋へ、寒い道のりを歩く。
目的地ではすでに何人かがタバコを吸っており、部屋全体が煙たい。一番端のベンチに座り、書類に目を通しながらシガレットケースのボタンをスライドした。手元を見なくても取り出せるのがありがたい。
それが彼女の狙いだと、彼は知る由もない。
「!」
タバコは銜えた瞬間にポキリと折れて、口の中で溶け始めた。タバコではなかった。甘い香りが口に広がり、タバコの苦味と混ざって絶妙に不味い。
「あんのやろー……」
ケースに残ったのは白い、タバコの外見を持っていた。シガレットチョコである。ご丁寧に口に銜えた部分の紙は綺麗に取り除いてあり、びりびりと破いた跡が残っていた。
「そろそろ引っかかった頃かなー」
語尾に音符を付けて、彼女は愉快そうに笑う。
「ちゃんと引っかかってくれてると良いんだけど。無駄に勘がいいからなぁ」
手元を見られればアウトなので、確率は低いだろう。だが、仕掛けただけでもこんなに楽しい。
恋愛の醍醐味は駆け引きである。
どうでしょう。一度やってみたい悪戯のひとつ。でもタバコは嫌いです(笑)
相手が吸うのは別に慣れてるんですけどねー。友達とか。
今年のバレンタインはどうでしょうー。義理チョコあげたほうがいいのかなぁ。職場に。